國學院大學経済学部 労供研究会

座長ご挨拶

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 環境条件が激変する中で、日本経済の構造は大きく変化し、非正規労働者が雇用労働者の1/3を占めるようになるなど、雇用のあり方や労働市場の状況も大きく変わってきた。こうした事態が進行した結果、外部労働市場の機能は、内部労働市場の補完ばかりでなく、多様な働き方と人材の有効活用を可能とするメリットをもつはずであったが、現実には人材能力の不活用と低い賃金・待遇を構造化させるデメリットが目立っている。外部労働市場における有期就業人材を節度ある企業ニーズに応えながら、同時に特定企業での就業を越えた常用雇用とし、非正規雇用の外部労働市場において、職務能力向上と賃金・待遇改善の機能を構築することが求められている。これは、今日、喫緊の課題となっていると言えよう。
 「労働者供給事業に関する調査研究」の目的は、こうした課題に応えられる外部労働市場機能の再構築を可能とする新システム開発のための基礎的研究として、システムの核となる労働者供給事業(労供)の実態調査を実施し、それがはらむ諸問題を解明するものである。また、新システム構築への具体的な課題とシステムの基本構想を明らかにすることをめざしている。
 このシステムの核をなすのは、労働者供給事業である。戦後日本の雇用においては、職業安定法によって、直接雇用を原則とし、労働者供給事業は原則として禁止されてきた。しかし、労働組合が無料で行う労働者供給事業のみは例外とされ、少数ながらも実施されてきた。労働市場における供給機能は、労働組合の原理的な機能であり、労働者が自ら行う中間搾取のない事業だからである。構想しようとするシステムは、労働者供給事業の発展的事業形態であると言って良い。それゆえ、研究者ばかりでなく、労供を担うあるいはその政策的な意義を認識する労働組合の方々とともに研究会が組織されたのである。
 労働者供給事業の歴史や現状が示す意義や限界を手がかりとしながら、地域別産業別の外部労働市場機能の再構築を可能とする新たなシステムを開発し、その実現促進のための政策措置を講ずることは、有期雇用や短期雇用の不安定雇用への対策としてもきわめて有効である。また、日本社会の格差拡大が指摘される中で、この非正規労働者問題が大きな要因になっており、その対策は、日本社会の在り方に関わるきわめて重要で急がれる課題となっている。
 本研究は、当初、國學院大學経済学部のプロジェクト研究として構想されたものである。社会的に貢献する研究を担う課題として、本学部はこうした課題に取り組むこととした。諸般の事情で当初構想の絞り込みを行うこととなったが、國學院大學21世紀研究教育計画委員会によって、このプロジェクトを平成21年度より支援していただけることとなり、本格的に開始した。これは、國學院大學が「本学の伝統と特色を生かした全学的な共同研究」を推進しているからであり、平成21年度から開始した計画「日本発共存社会モデル構築による世界貢献(共存学)」の取り組みに貢献するものと考えている。本研究は、「共存社会モデル」の一端を担いうる意義をも有しているからである。
 本研究は、平成20年度後半に準備的研究会を重ね、21年度から始まったのであるが、ここにホームページを開設することができた。我々は、研究会の活動と成果を広く紹介することによって、多分野にわたる労働研究へ問題提起し、多様な視点から労供事業をめぐる研究を深化させていく契機としたいと考えている。また、労組労供を中心とした、労供事業の理解と普及を図り、多くの方々のご理解が広がることを願っている。それによって、新たな外部労働市場の再構築の可能性が広がっていこう。
 多くの方々に、このホームページを閲覧・利用していただければ幸いである。

國學院大學労供研究会 座長 橋元秀一

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