去る、10月20日(日)、21日(月)に毎年恒例の労供労組協秋の学習会が8組合27名参加の下、マホロバマインズ三浦にて開催されました。
 講師は労供研究会座長の橋元秀一教授で、「非正規労働問題における労供事業の役割と可能性」というテーマで話をしました。
 橋元座長は、労供事業について、市場経済そして労働市場の観点から話をしました。
 「市場の長所は、生産と消費が市場で出会えば調和するということで、資源の最適配分、効率的配分が行われる。市場経済というのは需要と供給が出会って物が売れたり売れなかったりすることによって、何がどのくらい必要かという生産と消費のコントロールをする。この機能が市場経済の命であり、市場経済である限り景気変動は命だ。必ず景気変動がなければいけない。ところが、景気変動が行きすぎたりすると資源を効率的に配分するはずの市場経済が倒産を生んだり、失業を生んだりという大変な無駄を生じてしまう経済ということになってしまう。だから、景気変動も一定範囲の中でコントロールしなければならない。従って、市場経済がうまく機能するためには市場の失敗や貧富の差の問題や景気変動の問題について、政府がこの3つをしっかりコントロールすることによって、市場経済の長所は生きる。」と、景気変動について政府がコントロールすることの必要性を話しました。
 「市場経済が暴走しないよう、コントロールするには、『社会の秩序』で抑え込まないといけない。その社会の秩序は、近代社会においては働く者の立場で民主的なコントロールを行う、ということも重要な要素として入っている。そういう意味で労働者供給事業はとても大事だと思っている。」と、労供事業の重要性についての認識を話されました。
 「労働市場も財、サービス市場と同様に労働需要と労働供給が労働市場で出会ってコントロールされるかというと、ある程度は可能だが、本質的にはコントロールできない。しかし、労働市場が成立していないと市場経済は成り立たないので何とか成り立たせないといけない。労働力の供給側は売るしかないという存在で、一方で売るしかない労働力と一方では必要であれば買うという雇い主側の、そういう関係の需要と供給の市場がはたして市場足りうるかというと、当然足りえない。では、どのように市場として形成されるかというと、供給側についてのみ特別に団結したり、価格交渉を要求したり、納得できなければストライキをするなど、特別な権利を与えることで、需要の側と対等に出会えるようになった。供給側に供給独占を作ることによって労働市場も需要と供給が出会い、そこで必要な調整が行われるような仕掛けがイギリスにおいて作られた。弾圧の歴史を2世紀くらい経て19世紀の後半に刑事免責、民事免責を勝ち取って作られたのが、今日の労働法だ。このように労働市場がどの程度公正になるか、これは市場経済がきちんと機能していくためには、とても重要なことであって、安定的に成立しないと、労働力の再生産が不可能になるとか、質の悪い労働力しか供給できないとか、市場経済そのものを歪めていくことになる。」と、市場経済が機能していくための健全な労働市場の必要性を話されました。
 労組労供の成果と意義について以下のように話されました。 「供給の成果の第一は、企業は移っても、就労場所は移っても、就労の長期安定化ができるということ、第二は、相対的に安定した高い賃金・労働条件を実現していること。このことは、非常に大きな成果で、これは供給独占力の強さによって決まる。派遣労働や再下請禁止市場の場合とか競争が規制される公定料金の市場ではこうした機能がより発揮しやすい。」
  「労供は、労働組合の組織拡大と活性化、機能強化という役割も持っている。これは、経済学の立場からいうと、労働市場での供給独占をいかに作るかということが決定的に重要なことだ。」
 そして、労組労供についての期待を以下のように話しました。
  「高齢者雇用安定法で今後65歳まで雇用するということになる。その場合、自社で雇用できる企業ばかりではないので、労供を通じていろいろな企業で面倒を見ていくような高齢者雇用の中での役割。それから、ますます非正規が基本的な労働力であるという分野はどんどん増えていく可能性がある。それは、サービスニーズが特定の時間帯に集中しているなど、どうしても労働需要に対して波がある。そのような需要の中で、働く人の生活も成り立たせる労供機能は、とても大事だと思う。それから、ワークライフバランスに象徴されるように正社員における労働時間の問題や生活時間の問題がある。そこで、なぜ企業別組合が労供と組んでサポートするという、組合主導でワークライフバランスをやらないのか不思議でしようがない。いかに労供機能が有用であるかということを広めつつ皆さんと連携してやっていく。また、皆さんの労働需要の営業活動にも積極的にそういうところとの連帯を活用していく、ということが大事ではないか。産別レベルでも地域組織レベルでも、特にユニオンのレベルだと地方連合なども取り込んできているので、そういう意味では、地方連合レベル、さらには産別レベルとどう連帯しながら、新しい領域の労働需要にも労供が取り組んでいくのかというのはとても大事だと思う。」