本報告では、労働者派遣法が、どのような法目的をもち、どのような構成によって成り立っているのか、どのような対象に対して、どのような規制を行うのかを規範論理的な観点から検討した。実は、現行の労働者派遣法は、目的すら明確ではない。例えば、法第1条の「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進」とは、派遣労働者の正社員化の増進ことなのか、派遣労働者としての地位の継続性の保障のことなのか、あるいは最近の政府による規制改革において盛んに
喧伝された労働力の流動化の促進による結果としての就職機会の増加のことなのか、はっきりしない。報告では、2015年改正において新たに法第25条に挿入された「派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方」(これを「一時的労働」という)の観点から、労働者派遣法の構造を整理し、問題点を指摘した。