【報告要旨】 2021年2月25日研究会

JAMにおける労働者供給事業
JAM 組織化推進局 藤岡小百合

(1)ILUB結成の経緯

JAMは2020年12月に労働者供給事業(以下「労共事業」という)許可を得た。申請に至った経緯には、2019年9月に結成された「国際ブータン労働組合」通称「ILUB(International Labor Union of Bhutan)」が大きく関わっている。きっかけは「ブータン人の留学生が労働組合を結成し、労働者供給事業をやりたいと言っている」との相談であった。ブータンでは2017年から国家の政策により多く若者が留学生として来日したが、その際、渡航費や学費として約120万の借金をしている。公務員の月給が約3万円のブータン人にとってかなりの高額である。これにはブローカーが大きく関与している。「日本語学校を卒業すれば、日本の有名大学に進学できる」「日本は賃金が高いからすぐ返済できる」等、言葉巧みに若者をだまし、日本へ送り出したのである。実際は留学生の就労は週28時間以内に制限されており、ローンを返し生活する額は到底稼げない。生活の為やむを得ず28時間以上働いた結果、「不法就労」として多額の借金を抱えたまま帰国を余儀なくされたケースが多発したのである。

ILUBはそんな若者たちの支援と労働環境の改善、ブローカーを排除するため、日本で働くブータン人の若者たち9名が発起人となり結成された。ブータン国内には労働組合というものがなく、ブータンとして文字通り初めての組合の誕生である。

(2)労共事業と組合規約

ILUB結成の目的の一つである労供事業の申請にあたっては、問題が一つ発生した。申請に必要な資格審査の際、加盟単組数組合の規約の提出が求められ提出したが、一部内容が労働組合法5条2項を満たしていないというのである。労組法5条2項には「…その規約は組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと…」という一文がある。しかし一般的に規約に使われる「同数となった場合議長が決定する」という文言が、「無記名投票」(労組法5条2項5.8.9)にそぐわないというのだ。その後、別組合の規約を提出し申請は通ったが、労組法5条2項に適合しない点が指摘されたことを受け、組合規約の見直しの必要性を認識した。代議員制の在り方も全国規模かによって投票方法は変わる。また、組合役員に関しては、選挙権・被選挙権ともにあるとの指摘もある。

実際、昨年9月には労働委員会へ申立を行った組合が、労組法上の労働組合ではないとして申立を却下された事例が出ている。今後、法外組合と認定される組合が増える可能性も示唆され、思わぬところで組合の在り方が問われる事となった。

(3)外国人労働者の救済

 JAMゼネラルユニオンには多くの相談が来ているが、最近では特に外国人からの相談が増えている。賃金未払いや労働条件の不利益変更、最近ではミャンマー人から「デモに参加したら解雇する」という内容の誓約書にサインを求められたケースもある。彼らは外国人向けの相談窓口や管理団体等に相談しても改善されず、人伝で聞いた組合に望みをかけてやってくるのだ。

(4)労共事業と政労使による外国人受け入れ制度の民主化

 寄せられる問題の多くは労働組合があれば解決できるものである。そして、その労働組合のみが行える労供事業は多くの可能性を秘めている。労共では労働者組合が主体となり会社と協定書を結び労務を提供できる。会社もブローカーシステムを望んでいるわけではない。韓国のように政労使が協力すればブローカーを排除する事も可能だ。労共の、組合の可能性を、戦略的に、そして楽しみながら進めていきたい。