2019年1月30日 武井 寛

1 労働者供給事業の意義

(1)戦前における労働者供給事業とそれへの国家的対応

  ①労働力売買の仲介による利得目的
  ②生成の基盤は停滞的過剰人口のプール
  ③資本主義の展開に随伴
   →機能としての,労働力の「調達」と「管理」
   →国家はその「調達」機能を利用(治安対象としつつ黙認)

(2)戦後における労働者供給事業の禁止

 GHQ方針:労働組合による労務供給の促進
   →①労働組合による労働者供給(←しかし企業別組合の壁)
    ②請負形式の脱法禁止→労働者供給事業の禁止
    (①[労組労供の促進]と②[労供事業禁止]はコインの裏表)

(3)労働者供給事業禁止策の展開と労組労供

  1947年職業安定法と施行規則(上記②の具体化)
  →施行規則改正(1952年)
  →職安法44条の脱法的事業の拡大

2 労働者派遣法の制定過程における労働者供給事業の位置づけ

  行政管理庁勧告(1978年)
  労働力需給システム研究会「提言」(1980年)-労働者派遣制度化
  →労組労供の廃止を提言(組合は派遣業の主体となりえず)
  =派遣業前提(組合は邪魔∵↓)
  ・労働者派遣:供給元と雇用関係のあるもの
  ・労働者供給:供給先と雇用関係のあるもの
  ・労組労供:? 

3 労働者供給概念に関する政府の見解

(1)職安局コンメンタール(1960)

(2)職安局コンメンタール(1970)

 ※「乙(供給先)と丙(労働者)との間には使用関係が存在する。すなわち,丙は甲(供給元)から提供されて乙の要求する作業に従事するからである。この使用関係とは,広く事実上の使用関係を意味するものであって,乙と丙との間に雇用関係が成立している場合はもちろん,たとえば労働基準法上の使用者としての責任を甲が持っている場合であっても,作業の施設,工程等の実態から見て,作業上,直接,間接に乙の指揮,監督の下にあると認められる場合も含むものと解されるのである。」(423頁)
 ※労組労供についての説明は一貫して存在しない

4 労働者供給をめぐる裁判例(略)

5 労組労供の法的位置づけ

(1)当事者の認識(かつての)
  供給関係は供給契約(労働協約)が存在する限りで存続
  (供給の対価の授受:組合-供給先/労働者-供給先)

(2)「雇用」概念におさまらない労組労供

  就労先での「雇用」(労働契約)なき労務提供
  供給先での就労後も供給元と労働者との関係(組合員/組合の統制下)が継続
  →法的容認の根拠:労働組合が担うから

(3)法が禁止する労働者供給概念

  供給元が労働者を支配している関係に基づいて労働力のコントロール機能を担っているもの → 雇用関係の(形式的)有無ではなく,供給元が労働者を支配していること

(4)労働者供給の要諦-供給元と労働者との関係の継続

  否定的要素(中間搾取・不当な拘束)の排除のためには二つの道
  ①この関係の切断(供給先への直接雇用):職安法44条(原則)
  ②この関係の民主化(労組労供)    :職安法45条(例外) 6